深い思考を促す教科横断の問い(日本史×公民×数学)

戦争の悲惨さを伝える方法
戦時国債おもて


 8月は,広島・長崎の原爆の日,ソ連参戦,終戦の日など,戦争と平和について考えることの多い時期です。テレビや新聞の取り上げ方が8月15日を過ぎるとパッタリと静かになるのはどうかと思いますが。
 戦争の悲惨さを考えさせるための素材はたくさんあります。戦争を直接経験した人が高齢になり,体験の継承が心配されていますが,当時の資料や記録に語らせることで,戦争の悲惨さや無謀さを実感させることは可能です。また,当時を生きた人々がなぜこのような(例えば国債の利金受取りを止めるなどの)行動をとったのかを考えさせることは,時間が経っても意味のあることです。
 写真は,この国債は私がかつて祖母から譲り受けた昭和15年発行の国債(賜金国庫債券)です。額面は30円,20年後の昭和35年に償還予定で,毎年4月1日に1円9銭の利金が支払われることになっていました。昭和20年までは利金を受け取っていたようですが,昭和21年以降の分は利札が切り取られずに残っています。この年の前半に預金封鎖や新円切替が行われるとともに,この種の国債の元金及び利金の支払いを停止する法律も制定されました。国家の借金を帳消しにする措置がとられたわけです。それらの事情から,利金を受け取っていないのでしょう。仮に利金が支払われていたとしても,戦後のハイパーインフレ(数年間で物価がおよそ100倍になった)のもとでは,実質的に意味を持たなかったはずです。

Iレベル

 額面30円に対し,毎年4月1日に1円9銭の利金が支払われることになっていた。この国債を満期まで持ち続けた場合,元金と利金をあわせた受取り合計金額はいくらか。
(解答例)元金30円,利金合計21円80銭で,合計51円80銭。
 

Cレベル

 この国債の持ち主はなぜ,昭和21年以降の利金を受け取らなかったのだろうか。

Eレベル

 過去の政策について,国債を発行して得られた資金による投資と,その投資によって得られた成果とのバランスを考察しなさい。