深い思考を促す教科横断の問い(総合)

東日本・西日本
メンチカツ,大学,画鋲押しピン


Iレベル

 日本を東西に分けてそれぞれの特徴についてまとめてみることは以前からよく行われてきました。国語では方言,家庭科では雑煮の餅の形や出汁,社会科では「もの」や「ことがら」の呼び名などが,教科書でも取り上げられてきました。「もの」や「ことがら」についての伝統的な相違は,次のようなものが知られています。
事項 東日本では 西日本では
学校制服の白いシャツ ワイシャツ カッターシャツ(又はカッター)
壁に掲示物を留めるピン 画鋲 押しピン
大学の年次の呼び方 ○年生 ○回生
ひき肉を揚げた肉料理 メンチカツ ミンチカツ
小学校の通学範囲 学区 校区

Cレベル

 東西の境界が,時代によってどのように変化してきたか整理することができます。事項による違いを考察する,交通・物流網の発達,マス・メディアの発達,東京一極集中など,さまざまな要因が考えられます。「全体としては東(東京)の特徴が全国に広がっているが,ものによって変化の大きさが違うことの考察」や,「関西のものが東,あるいは全国に広がっている例の考察」などが考えられるでしょう。
 Iレベルで紹介した「画鋲」と「押しピン」のように,過去には同じものを指していたが,今では,金属製の金色のものが「画鋲」で,プラスチックの頭のついたカラフルなものが「押しピン」というように,別々のものを指す名となっている場合もあります。
 歴史に眼を向けるならば,電気の周波数のように明治期の日本が欧米の技術を取り入れた過程の影響を考察したり,横浜と神戸を比較することもできます。

Eレベル

 「なぜ日本では,国土を東と西に分けて比較しようとするのか。」「県別,旧藩別の意識はなぜ維持され続けるのか。」「道州制導入についての影響はどのようなものか。」など,そもそもなぜ東西に分けようとするのかを考えるのは,一段とレベルの高い問いになるでしょう。
 あるいは「現在の日本は『東と西』あるいは『都会と地方』という分け方でなく,『東京とその他』という分け方のほうが適当なのではないか,その現状の問題点は何か」という問いかけもできます。
 さらにそれらを併せて考えれば,「実際は東京一極集中が進んでいるのに(あたかも対等であるかのように)東西比較することによってどんな影響があるのか」というような深い思考も可能です。
 「そんなこと考えて何の意味があるのか」と誰かが言うような問いの意味を説明できることも教師にとって大切な力でしょう。