思考を深める教材

 思考を深めさせるためには,ただ「考えなさい」と言ってもうまくいきません。「何のために考えるのか」,そこが腑に落ちることが必要です。アクティブ・ラーニングでいう「真正の課題」は,そこに注目しています。「課題のための課題」「問題のための問題」という,教師中心の発想にならないことが大切です。
 そして,思考するための大前提として,圧倒的な知識は欠かせません。アクティブ・ラーニングは,短い時間で楽をして勉強できる魔法ではありません。これまで教室で黙って説明を聞いていた部分を自学自習によって詰め込むのです。(「詰め込み=悪」という思い込みが既に間違いです。)トータルの学習時間が増えてこそ,アクティブ・ラーニングの成果が出てきます。
 さらに忘れてならないのは,精神的安定です。教師や他の生徒との関係が敵対的であってはアクティブ・ラーニングは成り立ちません。学習の目的が納得できるものでなくては,やる気も起こりません。知識や思考力が本当に活かされるのは,入試のもっと先のことです。「大学入試改革を高校教育改革の誘因とするのが有効だ」という見方は強いですが,それが前面に出ると,「勉強は入試のためではない」という大義名分とのダブルバインドになる可能性が大きいでしょう。